脳梗塞の危険因子について

脳神経外科 担当部長 山田 勝

はじめに

高齢者が寝たきりになる原因疾患の第一位は「脳卒中」であり、国民医療費の上昇など社会的に重要な意味を持ちます。その一方で、働き盛りの40〜60代世代にも脳卒中は起こり、その後遺症が復職の妨げになって家庭のピンチに直結する重要な疾患です。予防できる部分のある疾患であり、これから説明する危険因子と脳梗塞の関係について正確な知識を得てください。
脳卒中(脳血管障害stroke)とは、「脳の血管に急な障害が生じ(血管が破れると出血をきたし、血管が詰まると梗塞をきたし)て、急な神経症状を引き起こす疾患」の総称です。脳梗塞は、脳卒中の中で最も多く、当科入院患者の年間入院数の第1位です(円グラフ)。2015年 当科の脳卒中総入院294例の内訳:脳梗塞185人(63%)、脳出血65人(22%)、一過性脳虚血発作(TIA)25人(8.5%)、くも膜下出血14(5%)、ほか2%。

2015年 大和市立病院脳神経外科の脳卒中総入院294例の内訳
2015年 大和市立病院脳神経外科の脳卒中総入院294例の内訳

脳卒中は大きく3種類に分類できます。

  1. 脳梗塞:脳の動脈が閉塞して(詰まって)血液不足により脳細胞が死ぬ病態です。
  2. 脳出血:高血圧で傷んだ脳動脈が破れて起こります。
  3. くも膜下出血:脳動脈瘤が破れて起こります。

神経症状が出る場合を「症候性」、出ない場合を「無症候性」と呼んで区別します。
脳疾患の特徴として、傷害された脳の部位によって出現する症状が異なります。下記のような症状が現れたらすぐに受診してください。

脳梗塞の主な症状

  • 運動麻痺:右手と右足(或いは左手と左足、稀には1本だけ)の力が弱くなり、持ち上がらない、或いは細かいことができない。使いにくい、歩けない
  • 言葉の障害:ろれつが回らない(構語障害)、言葉がでない(運動性失語)、言葉の理解ができない(感覚性失語)
  • 感覚障害:手・足がしびれて感覚が鈍くなる
  • 運動失調:手足がふるえてうまく使えない、うまく歩けない
  • 意識障害:呼びかけても反応がない、反応が鈍い、
  • めまい・嘔吐:持続するめまい、嘔吐

脳梗塞の成因別タイプ分類と年齢

脳梗塞の成因は大きく分けて3つあります。

  1. 動脈硬化によって動脈の内腔が狭くなって血栓が詰まる「アテローム血栓性梗塞」
  2. 心房細動などの不整脈をもとに、心臓内に生じた血栓が血流にのって脳に流れて脳動脈が詰まる「心原性脳塞栓症」
  3. 脳の小動脈の壁が傷ついて閉塞する「ラクナ梗塞」

下の表に示す通り、平均70歳代に生じますが、注意すべきは40代の若い方にも起こっていることです。

全185人 アテローム血栓症
111例
心原性塞栓症
60例
ラクナ梗塞
8例
年令 41才〜96才 45才〜95才 60才〜87才
平均 75才 78才 72才

脳梗塞の危険因子

脳梗塞で入院した患者の既往歴(以前にかかった病気)の明らかな164例について表に示します。

既往歴 アテローム血栓症
109例
心原性塞栓症55例
脳梗塞 12% 2%
糖尿病(治療中、未治療合わせて) 28 15%
高血圧(治療中、未治療合わせて) 28 12%
心房細動(治療中、未治療合わせて) 1% 22

動脈硬化を基盤にして生じるアテローム血栓群では、動脈硬化を進める危険因子として悪名高い「糖尿病」と「高血圧」が当然多く認められます。一方、心原性塞栓群では心房細動が多く認められます。これらの危険因子を持っている患者さんは、たとえ自覚症状が無くても「脳梗塞になる危険がある」と認識して、きちんとした治療を続けることが重要です。脳梗塞発症患者には、糖尿病や高血圧があることを知りながら放置(未治療)していた人が多く含まれています。

脳梗塞の転帰

退院後の転帰(どこへ退院したか)を表に示します。直接自宅へ退院できた人は、軽症のラクナ梗塞群では88%ですが、他の2群では3〜4割だけです。3分の1の人が、回復期のリハビリテーション病院に転院しています。命を落としたり、寝たきりになった重症例が1−2割もあることに注意してください。

  アテローム血栓症
111例
心原性塞栓症
60例
ラクナ梗塞
8例
自宅 41% 30% 88%
リハビリ病院 32% 33% 12%
施設 14% 7%  
療養病院 8% 8.5%  
死亡 4.5% 18%  

まとめ

当院の入院患者のデータをもとに「脳梗塞」の成因、発症年齢、危険因子、入院後の転帰について説明しました。自分や家族が脳梗塞にならないように、危険因子:糖尿病、高血圧、心房細動を特に注意して治療してください。

最終更新日:2017年12月12日

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